電極チップについて
役目と必要特性
電極は、溶接部に溶接電流を供給するとともに加圧力を与え、さらに被溶接物表面を冷却するのが主な役目です。
材料特性としては、導電性が良い、高温での硬度が高い、耐摩耗性が高い、熱伝導性が良いことが必要です。溶接を重ねるにしたがい、一般にナゲットの大きさが減少するのは、電極先端の当たり面が拡大し、溶接部の電流密度が低下するため温度上昇が減少するからで、溶接品質の安定には電極先端形状の管理が重要です。
電極形状
標準電極総合カタログ「e-蔵」に掲載している電極の先端形状です。被溶接物の形状によって適宜使い分けられます。コスト削減、材料節約のため、先端のみを交換できるキャップチップ型電極が多く使われます。
一体型
キャップチップ型
簡易的テーパーの測り方
テーパーの長さが20mm ※2であることを確認して、テーパーの先端 ※3をノギスで測ります。
先端 ※3の寸法が
約φ14の場合:1/10テーパー
約φ15の場合:MT#2(モールステーパー)
約φ12の場合:1/5テーパー
となります。
簡易的な測定方法です。参考資料としてご利用ください。
電極の管理について
電極の寿命とは
抵抗溶接における電極寿命は、最も重要な管理項目であり、使用限度を越えると接合不良が発生するばかりでなく、電極交換(ドレッシング)頻度が高くなると生産性にも大きな影響を与えることになります。
電極寿命は、基準ナゲット径、または基準せん断強さを下回ったときの打点数をもって判定し、電極寿命に相当する打点数の0.5~0.7倍の打点数を管理の目安として電極チップ先端をドレッシングするか、新品と交換するのが通常です。
電極のドレッシングと交換とは
スポット溶接の連続作業により電極先端は加熱されて酸化が進み接触抵抗が増大してきます。溶接電流を一定にしても先端の面積が増加すると、電流密度も減少し溶接不良の要因となるため、連続溶接の途中で定期的に電極チップ先端をドレッシングし、常に初期的状態に近い状態に戻すことが必要です。プロジェクション溶接では、上下電極間の平行度が重要です。
エスエムケイ製チップのドレスラインは、テーパーの底の位置を示しますので、ドレッシングの目安にご利用ください。
電極の冷却
電極内の水冷管から噴出する冷却水の流量および冷却水温度の維持が、電極寿命や溶接品質の安定と機器の寿命を長く保つために重要となります。
冷却水の温度は10~30℃に保ち、流量は電極チップ1本当り2~3リットル/分となるよう管理します。
電極材料一覧
種類 | 導電率(%IACS) | 硬さ (HRB) |
特徴 | 適用例(用途) | RWNA (CLASS) |
1種 (カドミウム銅・ジリコニウム銅) |
85以上 | 65以上 | 導電率、熱伝導率共に純銅に近く常温硬さ、高温硬さは純銅より改善されている。(非熱処理型合金) | アルミニウム合金、マグネシウム合金、金属被覆材(鉛、銀、合金化亜鉛、カドミウムの各メッキ材)、黄銅、青銅に対して推奨される。 | 1 |
2種 (クロム銅) |
75以上 | 75以上 | 抵抗溶接電極として優れており一般的に利用されている。(熱処理型合金) | 軟鋼、低炭素鋼、低電導黄銅類、青銅、亜鉛メッキ鋼、ステンレス鋼等最も広範囲に推奨される。 | 2 |
3種 (銅に次のいずれかの要素 ベリリウム、クロム、コベルト、ニッケル、シリコン、銀を含んだ合金) |
45以上 | 90以上 | 高い応力のかかる電流通電機構部品と、使用率の高い偏芯電極ホルダーに対して推奨される。(熱処理型合金) | 一般的に、高い電気抵抗を持ったステンレス鋼のような板材のスポット溶接に推奨される。また電極材料としてチップ、ベース、アーム、アダプター等に利用される。 | 3 |
4種 (ベリリウム銅) |
20以上 | 33以上(HRc) | 伝導率、熱伝導率は低いが、特に高い硬度と抗張力を持っている。 一般的に直接電極としては用いられない。(熱処理型合金) | スポット溶接機ではキャップ電極のシャンク、アダプター電極アーム、L型電極ホルダーに、またプロジェクション溶接機では電極台等機械的強度が必要な部分に使用される。 | 4 |
5種 (分散拡散強化合金) |
75以上 | 75以上 | 導電率は純銅に近いにも拘らず、溶融点近くまで高い硬度を維持しており抵抗溶接電極材として優れた性質を有する。 | 軟鋼をはじめ亜鉛メッキ鋼板ステンレス鋼等広範囲に利用されている。 特に溶接時の溶着が従来のクロム銅や、ジリコニウム入りクロム銅と比べて極めて少なく表面処理鋼板用として優れている。 | 20 |